カテゴリ:記憶のドアー( 10 )
冬の空
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テオ・アンゲロプロス監督が亡くなってしまった。新作の撮影中、事故だそうだ。
アンゲロプロス監督の作品は『霧の中の風景』しか見たことがないのだけれど、記憶の奥深くしまい込まれた冬の曇り空のイメージは、今でも時々浮かび上がってくる。
『旅芸人の記録』『シテール島への船出』『永遠と一日』など、漠然と見たいなあと思いつつ、今まで来てしまった。こんなことばかりではイカン!

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Ταξίδι στα Κύθηρα - Taxidi sta Kythira
『シテール島への船出』(1983)
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by saltyspeedy | 2012-01-25 23:59 | 記憶のドアー
大寒町
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100円ショップに行ったついでに、酔狂にも小雨の海岸へ下りて写真を撮りました。
砂浜にはさすがに人っ子ひとり見当たりません。
心なしか海もいつもより遠く引きこもっているようです。
手がかじかんでうまく設定ボタンが押せませんでした。

朝のニュースで「今日は大寒」と言っていたせいか『大寒町(おおさむまち)』という曲のことを思い出しました。ムーンライダースの鈴木博文さん18歳の頃の作品で、今日のような寒い寒い日にどこか遠い北の町を思いながら聴きたくなる曲です。

風待ミーティング⑮ ~鈴木博文~ 『大寒町』

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久しぶりに色々聴いてしまいました。
やっぱり鈴木博文さんの書く歌詞はいいですね・・・


・・・
こう触れていた 
ぼくよりも大切なきみなのに
わからない

そう 悲しみと
ぼくは 同じくらいの川となり
海へゆく

川の向こうに今、燃えつきた空が落ちる


ボクハナク 〜ムーンライダース
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by saltyspeedy | 2012-01-21 23:25 | 記憶のドアー
"Neuromancer"的風景
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午後の首都高速湾岸線を西へ。逆光の工場地帯を抜けていく。
このまま走り続けたらあの光の中に吸い込まれてしまいそうだ。
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by saltyspeedy | 2011-12-30 16:31 | 記憶のドアー
亀は意外と速く泳ぐ
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スピも意外と速く泳ぐのだ。

以前、テレビで「亀は意外と速く泳ぐ」(三木聡監督)という映画をやっていたので観た。平凡な主婦(上野樹里)がひょんなことからスパイになるが、その任務は「目立たず平凡に暮らすこと」。条理と不条理、日常と非日常がないまぜになってにわかに活気づく世界。ほぼ全編が三崎ロケなので、知ってる場所が次々出てくる。馬鹿馬鹿しいと呆れたり思わず吹き出したりしつつしだいに引き込まれ、最初で最後の招集がかかるクライマックスシーンではなんだかホロリとなってしまった。スパイのクギタニ夫妻(岩松了、ふせえり)と鄙びた三崎の商店街がいい味出していた。

スピが泳いでいる姿を見ていたら、ふと、この映画のことを思い出したというわけ。
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by saltyspeedy | 2011-06-22 16:24 | 記憶のドアー
コピ・ルアック
それは、おいしいコーヒーを淹れるおまじない。ドリッパーにフィルタをセットしコーヒーの粉をこんもりと盛ったら、まん中に指でそっと凹みをつけながらおごそかに唱える。「コピ・ルアック」。
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今までに飲んだコーヒーの中で一番おいしかったのは、セツ先生のコーヒーかもしれない。18の頃通っていたセツ・モードセミナーの休憩時間に、100円で飲めるコーヒー(カフェ・オ・レも)のサービスがあった。デッサンをしていて階下からコーヒーのいい匂いがしてくると、じきに休憩時間となる。周囲から聞こえてくるのは、さらさらと鉛筆をはしらせる音だけ。コーヒーの気配を感じながらあと1、2ポーズを描くこの時間が好きだった。コーヒーは、ふだんはほかの先生が淹れてくれるのだけれど、セツ先生が淹れてくれることもあった。黒板には「下品な缶ジュースはセツに持ち込まないで下さい セツ」の文字。コーヒーが苦手な向きにはちゃんとお茶も用意されていた。お茶は無料だった。

白い小ぶりなカップに入ったコーヒーを、中庭(空中庭園?)に持っていって飲んだり、お弁当を食べたり、他愛ないお喋りに夢中になっていてふと気づくと、隣りでセツ先生が聞いていたり…。建物全体がコーヒーの香に包まれるあの時間もまたセツの魅力だったんだな、となつかしく思う。なるほど黒板の文字には説得力があった(おかげで今でも缶コーヒーは苦手だ)。「若い頃に戻りたい」と思うことは特にないけれど、もう一度セツ時代に戻って、あの場所であのコーヒーを飲みながら絵を描きたいな〜とは思ったりする。セツ先生、あの稀有な人はもういないけれど、新宿区舟町にある学校の佇まいは、黒板の貼り紙もそのままに今もちっとも変わっていないみたいだ。

本物のコピ・ルアックはジャコウネコの糞から採取される未消化のコーヒー豆で、独特の芳香を持つ稀少品。ゆえに(その是非はともかくとして)世界一高価なコーヒーだという。本物のコピ・ルアックなんて、勿論飲んだことはない。おまじないは、映画『かもめ食堂』のシーンを真似て唱えているうちになんとなくくせになってしまった。

それにしても、自分で淹れるコーヒーよりも誰かに淹れてもらうコーヒーの方がおいしく感じられるのはなぜなのだろう。いつもと同じコーヒーでも、家人が淹れてくれた方が自分で淹れるよりも断然おいしい。けだし家人はその逆のことを言う。気持ちの問題かしらね?
そんなことを思いながら、今日もまたコーヒーを淹れている。
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by saltyspeedy | 2010-02-01 00:38 | 記憶のドアー
レスポール・ベイビー
津波注意報の日のこと。そわそわと落ち着かない気持ちと回らない頭で、いざというときに持ち出すべきものを考えた。最初に思い浮かんだのはなぜか「へその緒」であった(むろんHさんと私を繋いでいた「へその緒」のことだ)。この家の避難生活や再建(?)にとって全然まったく実際的でない品物ではあるけれど。

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    1999.4.撮影

そのとき発見したのだ。「へその緒」が入った桐の箱と一緒に、Hさんのポラロイド写真を。新生児反射で両手をあげたポーズがレスポールと同じ形をしている。思い出の写真だ。あれはたしか遅い午後だった。Hさんはとにかく夜寝ない赤ん坊であった。新生児の頃は、夜中も2〜3時間おきにおっぱいを飲ませたりおしめを替えたりと忙しいものだけれど、Hさんの場合、そういった欲求が満たされてもなかなか眠らないのだった。そして日中、苦悩するような顔をして眠っていた。夜寝てくれないとこちらも参ってしまうから、昼間はなるべく寝かさないようにくすぐったり揺さぶったりして起こしていようとしたけれど、まったく効果はなかった。かたくなに昼夜逆転の生活を守りつづけていた。

あの頃、新米の親業でいっぱいいっぱいだったとばかり思っていたけれど、おもしろがって写真を撮ったりしてたとは、ちょっと意外だ。そう言えば、このポラロイド写真機はどこへ行ったのだろう?
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by saltyspeedy | 2009-10-02 23:55 | 記憶のドアー
2004年8月29日の新聞
5年前の今日、朝日新聞の投稿欄『声』に原稿が掲載された。まだこちらに引っ越してくる前、実家の2階に間借りしていた頃のことだ。新聞に投稿したのは後にも先にもこの一回だけだから、よほど興奮していたのだなと(今となっては)少々恥ずかしい。当時、新聞の『声』(読者のお便り)欄を愛読しており、ちょうど募集テーマが「海で」だったので勢いで投稿してしまったのだけれど、その頃ブログをやっていたならばわざわざ投稿することはなかっただろう。メールで投稿できたのも気楽だったのかもしれない。
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※おつきあい下さるという奇特なお方、画像をクリックすると拡大表示されます。

どうも重箱の隅をつつくように(?)新聞を読み漁る時期とまったく読めない時期とが周期的にやってくるようで、引っ越して来てこのかた、まったく読めない冬の時代が到来しているため現在は新聞を取っていない(いざとなればWebで読めるし、節約のためというのもある)。しかしながらいくらデジタル化が進んでも、新聞紙の手触り・質感、におい、新聞明朝体とインクの染み加減には替え難いものがある。グッと来るものがある。そろそろまた新聞との蜜月時代が到来するのかしら…?
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by saltyspeedy | 2009-08-29 03:26 | 記憶のドアー
鳥男と烏女
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2週間位前の土曜日の夜、行き交う車も殆どない雨の三崎街道をAxelaで家に向かっていたときのこと。ゆるいカーブを曲がりきったところで、車道を横切る黒い影のようなものがあった。影はひらりと植え込みを越えて歩道側へ入ると同時に見えなくなったのだけれど、その身のこなしはまるで巨きな黒い鳥のようだったから、ハッとしたけれど不思議と急ブレーキを踏むような危うさをまったく感じなかった。

「いま、なんか黒い影男みたいな鳥男みたいなのが通った」と言うと、助手席のYは「えぇ!?」と驚いた様子で(当たり前)、あれこれ聞いてきた。私は説明しているうちに、どんどん鳥男のような気がしてきた(鳥男というのは、つげ義春の『無能の人』に出てくる鳥師の男のことを勝手にそう呼んでいるのだった。作品の中で鳥男がそこから飛んだ多摩川の水門近くに住んでいたこともあって、旧知の人物のような親近感を感じているのもある。まあ、そういう事情を考慮したとしても、ちょっとオカシナ人と思われても致し方ないかもしれないのだけれど・・・)。

今夜、雨風のうなる音とジョニ・ミッチェルのアルバム「HEJIRA」を聞きながら仕事をしているけれど、ぼんやりしてなんだか全然手につかない。ジャケットをひっくり返して見て納得。なるほどそこには烏女がいたのである。今夜ふと手にとったCDが鳥男の記憶を連れて来たのか、雨の夜がそうさせたのかはわからないのだけれど。
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by saltyspeedy | 2009-05-29 01:00 | 記憶のドアー
オレンジ色のニクイ奴
帰省中、毎日ドッグランに通った。ドッグランはJR武蔵野線の線路近くにある。この武蔵野線、私の長年の愛車であった。オレンジ色のニクイ奴である。小学生の頃、ぐるりがまだ田んぼや沼ばかりだった頃の武蔵野線のダイヤを今でもはっきり憶えている。午後3時台は4分と40分の2本、午後2時台にいたっては24分の1本のみだった。私は週に一度、3時4分の上り電車に乗って音楽教室に通っていたのである。月日が流れ、田んぼや沼は跡形もなく埋め立てられて宅地となった。家の数、そこに住まう人の数に比例して、運行本数は増えた。今では日中12分に1本が走っている。
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見沼田んぼが広がるこの一帯だけが変わらず当時の面影を残している場所で、三浦に引っ越して来る前はよく自転車でヌマエビを捕りに来たものだ。川べりで釣り糸をたらしながらおにぎりを食べたし、砂利道で転んでヒザに小砂利がめり込んだこともあった。犬が死んだときも来た。どこまでもまっ平らで、空が広くて、どこかで野焼きの煙が上がっていた。

驚くなかれ、これらは全てつい数年前のこと。いい大人になってからのことである。
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by saltyspeedy | 2009-01-07 23:58 | 記憶のドアー
フェリーに乗って
まだこちらに引っ越して来る前でHさんも小さかったから、6、7年前になるだろうか。内房の海岸沿いをあちこち訪れていたことがある。きっかけは何だったか(たぶん当時よく読んでいたつげ義春の旅行記あたりだと思うのだけれど)、とにかく内房という、あまり観光客が好んで訪れなさそうな海に興味を持った。当時はまだ免許も車も持っていなかったから、移動はもっぱら電車。駅からの距離もそう遠くなく波が穏やかそうな内房の海は、幼児を連れて行くのにも好都合だったのだ。

初めの頃こそ東京駅から「ビューさざなみ」の指定席を取って行ったけれど、じきに自由席ががらがらであることを知ってからは、もっと気楽に出かけるようになった。さらに慣れて来ると、Yさんの実家がある横須賀を始点にして、久里浜から東京湾フェリーに乗って出かけ、内房で一泊して再びフェリーで戻って来るようにもなった。浜金谷から館山までの間に点在する小さな海水浴場と漁港の佇まいは、「東京湾」のイメージを書き換えるに余りあり過ぎた。なかでも頻繁に訪れたのは浜金谷で、フェリーの発着地であり背後に鋸山がひかえているにもかかわらず、どうしようもなく〈通過点〉で、その〈何もない感〉がたまらなく気に入ってしまった。久里浜港からたった40分足らずだというのに、異国に来たような気が(大げさでなく)した。

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浜金谷からR127を南下してトンネルの手前、明鐘岬の突端に忽然と喫茶店がある。その名もズバリ「岬」。こんな場所に喫茶店があるというだけで奇跡に近い(しかも年中無休)。店内にはレコード、本、夕日の写真、そして古いもの(もとは新しかったものが古くなったという感じの古いもの)たちが、雑然と秩序を保っている。コーヒーを淹れるのは鋸山の湧き水だ。ジャック・マイヨールが訪れたとか、台風で何度も飛ばされたけど、その度に近所の人達(?)の手によって修復されたとかの伝説もあるけれど、やはりここの素晴らしいところは、何と言っても海と夕日。(この時は夕日の時間には間がありすぎて、見ることはできなかったのだけれど・・・)
内房からの夕日は、東京湾の向こう(三浦半島の向こう)に沈むのだ!

あれから6、7年の間、折にふれてはここのことを思い出し、まだあるのかなあ、と気になっていた。(国道沿いには廃屋と化したもとドライブインやレストランがあったから・・・) 先日、この写真が出てきたので思いきって調べてみたら、今も健在のもよう(しかもテラスもできて、きれいになっている感じ)。ああよかった!
フェリーに乗って今度こそ夕日を見に行きたい。(※写真はクリックすると拡大します)
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by saltyspeedy | 2008-11-07 23:17 | 記憶のドアー