羽毛のこと
ぷーままさんのところできれいなダイサギと漁をするコサギの写真を見て、いつもながらにいきものの造形の美しさに感心した。リンク先で目にした婚礼色のダイサギもレース飾りのコサギも、本当に美しい羽毛をしていた。羽毛。羽毛についてこのところ考えていたことを、少し長くなるけれどこの機会に書いてみよう。
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去冬にひき続き、この冬も大ヒットした低価格ダウンジャケット。
その縁飾りに多く使われているリアルファーについては以前書いた。
肝心の羽毛はどうだろうか?

以前気になって調べたときは、羽毛(ダウン、フェザー)の採取方法については毛皮ほどの情報がなく、検索して行き着く先も、羽毛布団を生産している企業のページのいくつかだった。企業ページによると、羽毛の採取方法には、食用に屠殺されたガチョウから機械で摘む方法と、生きている鳥から手で摘み取る方法の二通りがあり、手摘みの方が品質のよい羽毛が取れるとのこと。私の見たページには、「生きている鳥から羽毛を取るのは熟練した技術者が行っており、鳥に痛みはない」というようなことが書かれていたから、換毛期にグルーミングをしてやるようなものかと思い、一応の安心を得てしまったのである。いいものは手間がかかっているから高価で、お手頃価格の羽毛製品は食用の副産物である機械摘みなのだ、と。

しかし、である。そこに「大ヒット」・「低価格」というキーワードが加わると、事はどう転ぶだろうか? 春物の隣りでさらに値下げされて売られているダウンジャケットのことを思い、再び調べてみて見つけた「グースブログ」というページ。どうやらいやな予感は当たってしまったようだ。

スウェーデンのドキュメンタリー番組「カラファクタ」が、EUで本来は禁止されているグースのライヴ・ハンド・ピッキングの残酷な実態をレポートしたことをきっかけに、スウェーデンではボイコットが広まっているという(「ライヴ・ハンド・ピッキング」とは、生きている鳥から羽毛を取ること)。記事によると、世界の3大ダウン生産国はハンガリー、ポーランド、中国。ダウンの需要があまりにも高く(ひとつのダウンジャケットには、約70羽分の羽毛が使われるのだとか)、屠殺された鳥から採取するのでは間に合わないのだそうだ。効率よくダウンを生産するため、生きているグースから全身の毛をむしりとり、羽が生えそろってきたらまた採取。それが5回ほどくり返され、そして屠殺されるのだという。あまりにひどい。食用のガチョウだって、フォアグラを作るために強制的にのどに栄養チューブを突っ込まれ、それは酷い飼われ方をした果てに屠殺されたもので、これだって問題だけれど、生きたまま全身の毛をむしりとられ続ける一生だなんて、あんまりだ。

スウェーデンでは、このTV番組の反響で消費者のみならずメーカーも動いた。グースを虐待しないことをポリシーとし、実行しているメーカーもあるという(逆にライヴ・ハンド・ピッキングのダウンを使っていると疑われるスウェーデンの企業名も番組で公表された)。中国には生きている鳥から羽毛を採取することを禁止する法律がないという。それどころか、EU諸国向けに屠殺後のグースから採取したというニセの証明書を出す業者まであるのだという。なんてことだろう。

恥ずかしながら、私はEUでライヴ・ハンド・ピッキングが禁止されていることすら知らなかった。
日本人の多くも同じだろうと思う。ぜひ読んでもらいたい。多くの人に知って、考えてもらいたい。大ヒットしたダウン製品がどのようにして採取された羽毛を使ったものなのかはわからない。けれど、得られた情報から想像することはできる。
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※追記(2012年6月24日)
この記事を書いてから3年経った今でも、検索で来られる方がコンスタントにいらっしゃいます。それだけ情報が少ないということなのでしょう。この度も「動物愛護団体のビデオはヤラセですよ」というコメントがありました。もし本当に"やらせ"だとしたら、目的のためには手段を選ばない由々しき事態ですが、私には真偽のほどはわかりません。皆さんはどう思いますか?

さて、この記事を書いた後3年経って、状況がどう変わったか、新たに調べてわかったことを少し追加しておきます(調べたと言ってもネット検索の範囲ですので、そのようにお受け取り下さい)。また上にリンクしたブログ名「グースブログ」も、今は「ダウンジャケットの真相」に変更されています。

まず、<極上の眠りプロジェクト・理想の羽毛を求めて>(http://natural-sleep.com/sn-ht-02downquilt2.html)という寝具店のページに以下のような記述がありました。

>手摘み(ハンドピック・ハンドプラッキング)ついて
今年から手摘み(ハンドピック)という言葉が使えなくなってしまいました。どうも動物愛護かなんかで、ヨーロッパのある団体がキャンペーンをした結果のようですが、どうも妙なところにこだわる(ライブハンドピック=生きたまま羽毛を採取するのがだめで、屠殺はかまわない)欧米人のセンスには?です。
ただ、良質な羽毛を採取するためには、ハンドピック(ハンドプラッキング)が欠かせません。グースは孵化すると、約2ヶ月である程度の大きさに成長します。約10~12週間目で最初のプラッキングが行なわれます。これにより、グースの食欲が増し、体はさらに大きく成長します。約16~18週間目に2回目のセカンドプラッキングが行なわれ、良質のダウンが採取できるようになるのです。さらに22~25週目で3回目のサードプラッキングが行なわれますが、これがもっとも良質なダウンが採れるのです。
これが理想的な羽毛の採取ですが、多くの羽毛は、若鳥の副産物として採取されます。概ね8週間で体長はほぼ一人前になるために、この時点で屠殺され、機械によってプラッキングされます(マシンピック・マシンプラッキング)。

ただ、8週目ぐらいまでは、栄養はほとんどが体を大きくすることに使われ、羽毛に栄養がいくのは10週目以降です。ですから、ハンドピックといっても1回目のものであったり、あるいは屠殺後に手で取ったものについては、いい羽毛とはいえません。このあたりの「ハンドピック」という表示が曖昧だったため、嵩高14cm程度でも出回っていることが少なくありませんでした。その意味からはハンドピック表示ができなくなったのは良いことかもしれません。(引用終わり)


ここに書かれている方法が本来のハンドピックで、最初に羽毛布団の羽毛がどのように採取されているのか気になって調べた時に見た画像や映像からは、ドキュメンタリー番組の映像のような全身の毛をむしられて赤剥け状態の残酷な印象は受けませんでした。どちらが正しいのでしょう? 残酷な映像は、愛護団体のキャンペーンのための"やらせ"だったのでしょうか?

これは私の想像ですが、犬のブリーダーにも、その犬種を愛し、豊富な専門知識を持った本来の意味でのブリーダーと、金儲け優先で専門知識も無い、ブリーダーとは名ばかりの繁殖屋が存在するように、羽毛を扱う業者にも、優良な農場(当然、扱っているのは飼育費用や人件費のかかる高級品)もあれば、中には金儲け優先で劣悪な飼育環境、生えた先からむしり取るような農場もあったのではないか。どうでしょう? 

ヨーロッパでは、ライブ・ハンドピッキングは禁止・自粛の方向に向かいました。

同じく<羽毛の良し悪しはどのように決まるのか>というページに以下のような記述もありました。

手摘み(ハンドピック・ハンドプラッキング)の禁止について
昨年から手摘み(ハンドピック・ハンドプラッキング)ができなくなってしまいました。ヨーロッパのある動物愛護団体がキャンペーンをした結果のようですが、どうも妙なところにこだわる(ライブハンドピック=生きたまま羽毛を採取するのがだめで、屠殺はかまわない)欧米人のセンスには?です。
このキャンペーンで、プラッキングをして採取された羽毛は事実上流通が難しくなってしまいました。その結果羽毛農場に大恐慌をきたし、ハンガリーでの飼育頭数は一昨年の1/10までになった、など大きな影響が出ています。なにより、いままではじっくりと育てて羽毛を採取することで羽毛を高価に買い取ってもらえるメリットがなくなってしまい、結果、市場には16週以上を超えて飼育された高品質の羽毛が極めて少なくなっているという現状になっています。
スリープウェル・カウフマン社は、一切プラッキングをしていないという証明付きの羽毛を発表しました。かなり良い羽毛でしたので、どうなっているのか聞いてみると、途中のプラッキングを一切せずに自然に抜けるままにしておき、最後にと殺した後に手で摘み取るのだそうです。結局コストもかなり上がってしまっています。(引用終わり)


他にも、こちらのページ「羽毛布団の選び方 採取方法による違い」(http://www.e-nemunoki.com/umouerabitop3.html#hando)に書いてある説明と経緯を読んで、やはり考えてしまいました。とても長いので引用しませんが、換羽前に羽を手で摘むハンドプラッキングは、それが適切に行われた場合でも、動物虐待にあたるものなのか?と。

さらに、アウトドアウェアのメーカーであるパタゴニアのブログ「ダウンの真相」(http://www.thecleanestline.jp/2011/12/the-lowdown-on-down-an-update.html)にも考えさせられましたし、ユニクロ製品のダウン採取方法について質問し、回答を得たという方のブログ記事(http://blog.livedoor.jp/ms_melody/archives/51849994.html)も見つけました。

行き着くところはやはりアニマルウェルフェアです。このことについては今後も考えていきたいです(平飼い卵が手にはいるようになったので、こつこつと実践中)。
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by saltyspeedy | 2009-03-15 03:41 | 動物たちのこと
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